Cheese Dishes – Lost in Translation / アンティーク チーズディッシュから垣間見えるイギリスの歴史

チーズグッズプライベートコレクションの一部(苦笑)、公開!!ガラスのチーズドームたち、全て過去にアンティークショップで発見したもの。ガラスはアンティーク ではないので、懐にもとっても、とっても優しい売値です。チーズはアートでもあると思っているので、個人的にはチーズが見えるガラスのドームの方が好きなのです。ちなみに、チーズナイフを入れている器・・・これはフランスでかつてチーズを作る際に使われていたというチーズ型。よく見ると、ホエー排水のための穴があります。これもイギリスのアンティーク ショップでよく見かけますよ。ちなみに、ワインボトルホルダーになっているものは、フランス、ボルドー市の昔の路面電車の線路を切り取って磨いただけのアート的オブジェ。ワインホルダーにぴったりなサイズ。さすがボルドー!??

ちょっと大きめのアンティークショップやアンティークセンターでは絶対に一つは見かける、いわゆるチーズディッシュと言われるものたち。つまり、本当のアンティークもの。あまりにも普通に見かけるので、いつもあまり気にかけず、状態が良さそうだなと思ったものや、ちょっとしたチーズ史を語るための参考になりそうなものだけ、写真に撮って、満足していました。やはり時代がはっきり分かるものは気になるものです。タグにVictorian (ビクトリアン)と明記してあったりすると、フムフム。やはりヴィクトリア時代、つまり大英帝国、イギリスが世界を制覇し(日本は明治時代)、産業革命も終盤に入り、色々なものが大量生産されるようになり始めた頃。きっといろんな方々がたくさんのチーズを嗜んでいたのかなと思わずにはいられないのです。この時代、「大量生産、溢れるモノ」に対して疑問を持ったのが、アーツアンドクラフト運動を起こした、かの有名なWilliam Morris(ウィリアムモリス)。ウィリアムモリスは、インテリアデザインで有名ですが、実は時代を同じくして、この時期に工場製大量生産スタイルのチェダーチーズが、アメリカからイギリスへ入ってくるようになり、農家製のチーズの市場的価値が低くなっていくことを嘆く風潮も地方であったのです。何だか、現代にもその流れがありますね。そう、チーズの発達は社会環境に大きく影響を受けることがよく分かります。歴史は繰り返される??左写真の奥は、チーズディッシュの中でも、「Stilton Stand – スティルトンスタンド」というもの。このスティルトンスタンドも19世紀に盛んに作られていたもの。スティルトンチーズがロンドン市場で知られるようになったのは18世紀終盤。19世紀にはスティルトンチーズは盛んに取引されていたというチーズ史実。歴史の数字がバッチリ合って面白いですよね。そして、このスティルトンスタンドからは当時のスティルトンの大きさが分かります。現在のスティルトンよりかなり小さいのです。

最近のこと・・・あることがきっかけで、イギリス伝統チーズ料理について調べていたら、e-Bay でこんな本に遭遇!!「Cheese Dishes = チーズ料理」と思い込んでしまい、よくよく確認もせず即買い!英語のDish には料理という意味とお皿という意味があるのです。e-Bayの恐ろしさで、この本のお値段がまた素晴らしく・・・e-Bayを利用されていらっしゃる方はご想像つくかと思いますが!そして、まさかチーズ専用のお皿の専門書がこの世に存在するなど想像さえしておらず・・・

さて、本が届き、開いてみたら、まさかのチーズ陶磁器専門書!!世界はまだまだ、広い!こんな専門書があるのですね。どんな人が書き、どんな人が何の目的で読むのだろうか?このエピソードを義母に話したら、表紙の1750 – 1940という数字から、当然、陶磁器の本であることが分かる!とのこと(苦笑)。この数字は、イギリスで陶磁器が盛んに作られていた年代を表す数字とのことです。これってイギリスの常識なの?私はね、お料理の本であることを期待したんですよ(涙)…… しかし、この本よく見てみると・・・私がかつてアンティークショップで盗撮だけしていたものが、きちんと載っているではないですか!偶然にもこの本と出会って以来、これまでアンティークのチーズディッシュを一つも買っていないことを後悔しはじめました・・・そして、とりあえず思い当たるご近所アンティークショップに行ってみましたが、探す時はないものなんですね。状態の良いものがない!欲しいと思うデザインのものがなかなかない・・・(涙)。まさにアンティークは出会いなのです。そしてしばらく経って・・・

出会いましたよ!!ある日、小1時間ほどあまり馴染みのない田舎町(車で30分程度のところ)で時間潰しをしなければならない状況となり、その町のアンティークセンターへふらり。デザイン的に見たことがない!!もちろん、最近のちょっとした苦い思いから、作られた年代もメーカーも分からないまま即買い。バックスタンプ無し。専門書もあることだし、すぐにいつの時代に作られたものかくらいは分かるだろうと鷹をくくり・・・でも、どんなにGoogleさんに聞いても出てこないし、Twitter で投げかけてみても、イマイチ・・・イギリスの陶磁器専門家といえば、ショットンゆりさんだ!と思い、図々しく聞いてみたものの、さすがのゆりさんでもはっきりとはわからず・・・でも、おそらく19世紀終盤あたりのものではないかと・・・こんなに日本チックなものは珍しいとのこと。確かに中国を意識したパターンはこれまでもいくつもみてきました。19世紀終盤といえば、日本とイギリスの交流が盛んだった時期。何だかロマンチック・・・このまま不明なままの方が良いかなぁ。でも、知りたい!分かる方がいらっしゃったら、ぜひお知らせください!!

アンティークとは出会いであること。そして、少し歴史を勉強すると、アンティークショップはとても楽しいのです。イギリスの歴史、イギリスチーズの歴史、そこから見えるアンティークの価値。アンティークから見えるチーズの歴史、イギリスの歴史。現代と繋がることも沢山!イギリスはコロナ対策規制が厳しくなる中で、暗黒の冬へとまっしぐら・・・そんな時、アンティークで頭を過去へトリップさせ、チーズを食べながら、しばしの現代逃避は心の健康にも良いかもですね。最後までお読みいただきありがとうございました。現在開講中の、Academy of Cheese Level 1 コースではチーズの歴史もチラリチラリとお話しています。11月もオンラインで開講となりました・・・詳しくはこちら