#イギリスチーズ

ウェンズリーデールとフルム・ダンベール – チーズ作りの伝播

「チーズ目線で見るヨークシャー、ランカシャーの旅」の続き。現在のフランス、ノルマンディー地方からノルマン人がブリテン島に侵入し、ブリテン島を征服した1066年のノルマンコンクエストは、イギリスとフランスの交流が盛んになるきっかけとなった出来事。当時、中央ヨーロッパでは、ローマキリスト教会による修道院制が急速に広がっていた時代でもあり、中央フランスあたりから修道士さんがヨークシャーにやってきて修道院を造り、定住(なぜヨークシャー??)。その名残がRievaulx Abbey やJervaulx Abbey。今でも歴史遺産として大切に保護されているので、この地域を訪れる機会があれば、立ち寄ってみる価値あり。自給自足の生活を営んでいた修道院ではビールやチーズ作りの技術が発達。であればこそ、当然、チーズ作りにおいても、英仏の交流はあったことは容易に想像できます。実際に英仏両国のチーズ博物館を訪ねて、見えてきたこと・・・

イギリスチーズ目線で見るヨークシャー、ランカシャーの旅

新型コロナウィルス、パンデミックの出口が少し見えてきたとはいえ、気楽なヨーロッパ旅行、日本帰省はまだまだ夢物語のような気がする2021年の夏。状況をポジティブに捉え、これを機に、改めてイギリス国内に目を向け、イギリス伝統チーズの原点地の一つ、ヨークシャー、ランカシャーをじっくり巡ってみました。まさに大人の修学旅行?ヨークシャー、ランカシャーといえば、チーズ原産地というだけでなく、ビクトリア時代、つまり産業革命期は特に栄えた地域。その名残はしっかりとあり、食文化も高く、景色、文化、食、期待以上に楽しめます。ということで、今回は、チーズ視線の観光案内風、旅行記。

コロナとクリスマスとニューライフ

12月の第一土曜日。この日は、毎年当然のように、一年の〆としてロンドンでクリスマスチーズ会を開催していました。もはや、そんなことができていた事実さえ、ちょっと信じ難いと感じる2020年の12月第一土曜日。2016年から、毎年開催していたチーズクリスマス会を開催できないのは、やはり寂しさを感じてしまいます。とはいっても、2回のロックダウンを乗り越えた(??)イギリスは社会が新機能で動き出し、ちょっとしたワクワク感があるのも事実。いやいや、すぐにやってくる、EU離脱(実はコロナよりこちらの方が恐怖・・・)。世界が一変してしまった2020年の12月の第一土曜日。クリスマスチーズ会を開催する代わりに、この場で2020年という年そのもの、そして、これまでのクリスマスチーズ会に対する思いを巡らせてみました。クリスマス時に好評をいただいていたCulture & Culture のクリスマスフルーツケーキもレシピ公開(本記事末尾)!今年もクリスマスチーズ会のためにフルーツケーキを焼きたかったなぁというのが本音ではあるのですが・・・

Quince Membrillo Marmelada or Kaseita – クインス古今東西

10月、イギリスは大学の新年度が始まる月。ワクワクした大学新入生たち。そして想定内のコロナ第二波。すでに地域によっては完全ロックダウン。ロックダウンとまではいかなくても、国全体、かなりの制限付き生活。就学児童を抱えるご家庭は、10月ハーフターム中のおうちアクティビティに頭を捻ることになりそうです。というわけで、おこもり生活のアクティビティの一案になればとも思い、今回は10月に旬を迎えるクインス(日本でいうマルメロまたは西洋かりん)のお話。活用法(つまりレシピ)、大人にもちょっと嬉しい食文化伝播のお話などなど(次ページへ)。チェダーチーズや、羊乳のハードチーズ、さらにはブルーチーズと相性が良いことから、チーズ専門店なら絶対に取り扱っているクインスゼリーやペースト。陳列されたチーズの横にひっそりと置いてある、オレンジ色の羊羹のようなもの。それがクインスペーストまたはクインスジャムです(日本では「メンブリージョ」)。保存食と言う意味で、イギリスではクインスチーズと呼ばれることもあります。「チーズ」という言葉に保存食というニュアンスがあるためだとか・・・スーパーのチーズカウンターにも置いてあることも多々。クインスはワインと同じくコーカサス地方(黒海とカスピ海に挟まれた地域)を発祥とし、地中海を経由し、西はヨーロッパ、そして東にも広がり、日本へは16世紀に、ポルトガルから九州の長崎へ伝わったそうです。つまり、スペイン、ポルトガルが強国だった大航海時代。マルメロは、鉄砲と一緒に日本へやってきたの?と思ってしまいますよね。